ありがとう。ありがとう。
でも、ごめんなさい。
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嫌な夢を見た。昔の夢。あの時はただ“夢”を追っていただけなのに。
それが、こんな結果になってしまうなんて。
よく考えたら、何故自分はベッドの上にいるのだろう。
着ていたコートは綺麗に畳まれ、鞄はフックにかけてあった。
「あ、起きられたんですか?」
白色の女の子。唇は当たり前だが赤い。
だけど、肌も服も髪すらも白い。
カーテンも床も天井もタンスもフックも何もかも。
「此処まで運んでくれたの?」
と聞くと、女の子はおどおどしながら答えた。
「運んだの、のはイズさん、です。私が見つけて、イズさんに運んでもらったんです」
女の子は僕のところに、食事を持って来た。
やっぱり、お盆も箸も白い。
何故?
「この国、白色しかないんです」
女の子は寂しげに言った。白色しかだせないってことか。
つまらないな。うん。
「私、色のある町に行ってみたいなぁ」
と言うと、女の子は我に帰ったように続けた。
「お客さんに、こんなこと言うの変ですよね」
「……」
「じゃ、じゃあ失礼します」
女の子は立ち去ろうとした。
「名前」
僕は簡潔に言った。
女の子の体がびくっと跳ねた。
「ミール・アレッシェオです」
その時の表情は本当に悲しそうだった。
何かおかしい……。