「行ク。あイに行くヨ……“カナリア”」
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「ルジ……後ろの子は、空孤の子供か?」
ヘイムダルは僕の後ろにいるミールちゃんを指差した。
ミールちゃんはぎゅっと、僕を掴む。
「おいで」
聞いた事のない、ヘイムダルの声。
ミールちゃんは安心したのか ヘイムダルの前に来た。
「優しい子だな。どうやって逃げて来た?」
ヘイムダル は本当に耳がいいな。
「お母さんが、行って来なさいって……」
「そうか。そなたは優しい子だから、ルジといては苦労する。いずれ。
だけど、ルジといることで ルジが助かる。危険だけれど」
ヘイムダルはミールちゃんの頬にそっと触れた。
九人の子を産んだというヘイムダル。
王 平民 奴隷 という三の階級を創ったヘイムダル。
ひとはヘイムダルの子とも、言われている。
「私、ルジさんと一緒に行きたいです」
「……ルジ、大丈夫か?」
「うん。ヘイムダル、僕は貴女を直せと言われた。でも、今はできない。
時間が足りないのもある、でも此処で『時間』をなくしてしまったら、奴等がやって来た時に
戦えなくなる」
「分かっているよ。早々に此処を立ち去るがいい」
ヘイムダルの言葉に村人は不評の声を漏らす。
「黙れ」
ヘイムダルが凛とした声で言った。
「ルジ、行け。私はじきに回復する。ヴァングに見つかったら、間違いなくお前は殺されるぞ」
「うん。僕は『アース神族』の見方だからね」
「アーシュリーはこの村を捨てた」
一層村人の声が強くなる。
無理もない。
ヴァン神族は強力な一族。
裏では死の創世者 卑御汰と卑御手とも、関係があるといわれている
そして、日本妖怪との繋がりも深く、竜成九子との関わりも深い。
敵にまわすと厄介、だが実際今自分は狙われている。
だから、ヴァングと聞いた時から、関わりたくなかったんだ。