『この世界は歌』
『世界はある一人の創造によって創られたことになる』

朔の言ったことを思い出してみた。まさか。でも、その証拠に『銀の銃』はなくなっている。
じゃあ、あの時の“歌”は──

「おい」

考え事をしているところに、リミナが声をかけてきた。
前方をみると、高くそびえ立つ城壁。門は閉まっていて、門番らしき人物はみあたらない。

横も後ろも山ばかり。なのだが、生き物の声は聞こえない。気配すらしない。
先ほどまで大地を照らしていた 太陽は燃え盛る炎のように赤い。


「レナード・ジェロ。“Z”。“マーリア王”」

と、門に向かって男……レナードは叫んだ。
すると、門が音をたてて開き、レナードが通ると門は閉まった。

「自分の名と、属性、あれば王を述べることで門は開く。お前は登録していないから、訪問者として
入れ。私についてくればいい」
「はぁ」

気の強いひとだなぁ。こういうひとは苦手だ。秘密をどんどんあばかれそうになる。
だけど、自分の秘密は話さないようなひとだな。リミナは。

「リミナ・アッシェロ。“G”。スヒター王」

門が開くと、リミナは僕に着いてくるよう手招きをした。
リミナが通ったら、門は閉まると思っていたがそうではなかった。まるで、門が意思を持っているみたい
だ。

内側から門をみると、門には名前と属性、王らしき名前が刻まれていた。
書いてある名前は百以上、あたりまえか。


「この門には呪い(まじない)がかけられておるのだ」
「これも“歌”とか何かですか?」
「そうだ。この門はある一人の女性の歌に惚れた。その女性はもう死んだが 女性の愛していた
この城、いや家を守るためにこの門は此処に在る。一人の歌が意思をもつ物を生んだんだ」

遠きを見つめるようにリミナは言った。行くぞ、と僕に背を向け歩き出す。
城までの道のりは長く、凸凹している。レナードの姿は見えなかった。

城の庭には、木々が生えており外では見えなかった生き物もいる。
何故だ? 此処から見ると太陽は柔らかな光で地を照らしている。

外には何かあったのか? 何も感じなかったが……。


「とまれ」

城に入る前に、リミナは立ち止まった。