「何ですか?」 
「貴様は何ものだ?」

敵でも見るかのような目つきで僕を見る。

「ただの 旅人ですよ、多分」
「私は始めて貴様に会った時、『王は誰だ』と聞いた」
「はい。でも貴方は『もし王は誰かと聞かれたら』と言った。もし、ということは大抵のひとは
“王”というものはついていないのですね?」

リミナは妖艶に微笑んだ。

「正解だ。私はあの時、貴様から何かを感じた。常人ではない、死ということに生ということに
慣れているような感じがした」
「少なくとも、僕は死ぬ気はありませんし、生きて叶えなければいけないこともある」

カナリアは僕が救う。双子の思う通りにはさせない。ルーンの好きな通りにもさせない。
だから、そのためにルーンは邪魔なんだ。アイツがいるだけで、僕は変わる。

「おもしろい。歓迎してくださるだろう。ルナーク様は」

城に足を踏み入れた。リミナはただのひとではないということが分かった。


「ふむ。そなたが、異国のものか?」

宝石がはめ込まれた王座に座っているのはルナークだろうか。
空色の髪、瞳。肩には体は白で尾が空色の鳥がとまっていた。

「はい」
「名は何と申す」
「ルジ、です」

じっと 僕をみつめるルナーク。

「そなたに似たものが、何処かにおったような気がする」
「そうですか」

一瞬ドキっとした。似たもの、それはきっと……。

「お主は知らぬのだな。この世界のことを」
「はい」

ルナークが立ち上がると、鳥は開いていた窓から飛び去って行った。

「私が説明するよりも、リミナのほうが知っておるだろう。説明してやれ」

数秒間をあけ、リミナはしぶしぶ話しはじめた。

「この世界は“歌”。ひとの歌の世界。始まりは“カナリア・レナードリー”が歌った『創世の歌』
が世界を創ったと言われている。その歌から『世界』は変わった」

カナリア──! やはり、あの時の歌は カナリアのものだったんだ。
「人々は自分に眠る“歌”を見つけ、歌い 万物のチカラを借りることに成功した。
ひとには魔力がある。“コトバ”という魔力が。それに加え、カナリアが創った歌というチカラを
組み合わせることで、チカラは発動する」