僕が驚いたような表情をすると、リミナはにやりと笑った。
ルナークは何も分かっていないみたいだ。
「貴様、何か知っているな?」
「……この世界のことについては知らない。でも、『この世界』創世以前のことなら少し」
「ルナーク、貴様は出て行け」
様抜けた。趣味? のことになると熱中するタイプだな。
というより、戦闘マニア? きっと、魔術関係の血でも入っているのだろう。
「此処の主は私だ」
「父の功績のお陰で、兵がいる。決して貴様のチカラがあってではない。
そんなこと 分かっているだろ?」
こういう時に誰か来てくれると嬉しいよな。
重い雰囲気が流れる。
「だが」
「まともな歌も歌えぬ奴に従う価値はない」
ほんとに女かよ。
ルナークは諦めたように、部屋から出て行った。
この状況で此処に残されてもなぁ。
「ルナークは、何なんですか?」
「……ルナークの父、アスガロは 百の兵を一振りで倒したと言われる猛者だ。
そのチカラに惚れ、従うものが多い。私もその一人だ。死後も、アスガロの恩を忘れず
イミナール家に忠誠を誓っている。だが、アスガロの息子ルナークは歌の属性は『L』。
それに、まだ歌が完成していないのだ」
ありがちな、家族関係だな。
「そんなことはどうでもいい。話してくれないか? 世界創世の前を」
「……はい」
「僕が前の世界の崩壊の切欠です」
リミナの表情が曇る。まぁ、実際にそうなのだから。
「切欠だったとしても、何故このような世界になったのかは分かりません。
手がかりがあるとしたら、カナリアの『世界創世の歌』。世界が歌なら、もとも歌。
この世界の万物には意思がある。それはきっと、カナリアの意思なのではないでしょうか」
カナリアが望んだものは 自由だったから、ね。