「アウト、だな」

およそ、その場とは不釣合いな陽気な声。
扉のほうに目をやると、左目に眼帯をし、縦じまのスーツを着た男性が僕を見て笑っていた。

「マロニエ!」

と、リミナが叫んだ時には遅かったようだ。
マロニエと呼ばれた男は、指をパチンとならした。

すると、地は震えるのをやめ、刀の光はなくなり、僕が発動しようとしていたものが消えた感覚
がした。リミナはマロニエを睨んでいたが、マロニエは笑っている。

「リミナー、こんなとこで暴れられると困るよ。怒られんのは全部お前の世話係のオレなんだから」

世話係……? リミナはどうみても、姫という感じではないし、幼い子供でもない。

「臆病ものが。知ったことか」

リミナの口調に眉をよせるマロニエ。
何か言うか、と思っていたがマロニエは僕のほうに視線を向けた。

「あんた、ラッキーだったね」
「……」
「オレが来たのもそうだけどサ。リミナが“王”憑きでチカラを発動していたら偉いことになってたよ」

何処か気に食わない口調。

「その前に、貴方は何ですか?」
「オレ? オレはマロニエ。『マロニエ・ウツギ』」

ん……? この男、何かちがう。

「その眼帯は……、無いとかチカラを封じてるとかですか?」

ありがちなことを聞いてみた。そんなこと、隠す必要もないだろうと思い。
マロニエは先ほどの笑顔とは逆に少し哀しそうな表情をした。
そして、眼帯はトントン、と叩き言った。

「これはオレが臆病者だって印だよ」
「それを外せば、入れたものを」

リミナが口をはさむ。

「いいんだよ。入れなくても、アスガロ様への恩は返せる」