ミールちゃんの目はおどおどとしている。
そして、震える声で言った。

「ど、うして分かったんですか……?」

「やっぱり。“空孤”(クウコ)というのは、三千歳を超え、神通力を自在に操れる大神狐なんだよ。
その姿は、尾はなくひとのカタチをしていて耳だけが狐なんだ」

「でも……っ」

「きっと、ミールちゃんのお父さんは気づかなかったんだろうね。お母さん……空孤は、我子を護りたかったんだよ」

ミールちゃんは震えている。当たり前といったら当たり前。
最初聞いた時から、何かの妖(アヤカシ)とは思っていた。

全て白にしたのは、我子を邪気に侵さないため。
他にも方法はあったのだけれど、それは自分に不可がかかるから、やめたんだろう。

だけどそれ以上に、この町には空孤の殺気が満ちている。

「ルジさん。私って妖ですか?」


「分からない。神と崇められるものと神を崇めるものの間に生まれた子。珍しいよ。
だから、僕が思うに君は──“神使”だ」

ふらつくミール。

神の使い。

神、というのは実在しない。
在るのは、創世者と権利者。それをひとは“神”と呼ぶ。

生死を操るものを、神、と。