手を動かすたびに、鎖の音がする。
真っ暗な部屋。叫んでも誰にも聞こえない部屋。

「起きたか」
「マロニエさん……」

どうして? とリミナの表情からそう伺える。
マロニエは意地悪く笑った。

「ったく。裏のリミナは表の時は覚えてるっつーのに、表のリミナは裏のときは覚えてねーって
どういうことだよ」

小さく舌打をする。
リミナは状況がさっぱり分からない。

「何故、封印がとけた」
「?」

────────

「時間戻すのハ、ダメよ」

え? コイツ、さっきから何故僕の

「考えてることが分かる? だって? アタシ、読心術得とくしてるカラ」

歌は歌はないのか? それに、さっきのサティ王というのは何だ?
リミナの時のように、地が震えるわけでも何かが輝いているわけでもない。
さっきと何も変わっていない。

「歌は歌うわよ。まだ、だけどネ」

「!?」

淡い水色の触手のようなものが六本、部屋に現れ そのひとつは僕を掴み、
空へと僕を持ち上げる。

バキン

と、何か金属が壊れる音がした。
僕を掴んでいる触手を見る。
透き通った触手。先ほどまでは、何もなかったが 体内に 懐中時計が飲み込まれていた。

これじゃあ 無理だ──。
このひとには『銀の檻』は見せたくない。

『汝 我。双つの存在! 相容れぬけれど、境界はないと等しく、
それはまるで空のよう さぁ、始めよう。狂宴を。
天の存在、地の存在。コレラの境界は水
その力 恐ろしく、頼もしく、 コレは凶器。
だからこそ、離された。上と下。上は日を。下は月を。歌は真実。
虚ろな人魚のウタは死。死の存在と生の存在。望んだのは誰?
願わなければ、叶わなかった 上との関係。
だけど、願った哀れな人魚! さぁ、知るがいい。上の恐ろしさを──!
我 夜に従うもの── 月の神秘、今、重なる──狂宴』