「ルジさん。お願いがあります」


 ダメだ

「私を」

聞いては駄目だ


「外に連れて行ってください」


これでは、あの時と同じ──。

「幼い神使は大人しくしてなよ」

僕は平静を保ちながら言った。

「嫌です。私、私……神の使いなんかじゃない!」
「駄目だよ。それよりも、護ってあげなよ」
「え?」
「奴等から。権利者や創世者は狙われやすいんだ」

言ってもいいだろう。分かりはしない。それに、いずれこの子は狙われる。
だから、空孤といたほうが安全。
まぁ、奴等が動くのはまだ、先。

「よく分からない……。だけど! 私は出たい。お母さん、私から離れようとして私をこの
宿に預けてる。だから、私がいなくても大丈夫だよ」
「駄目。僕は、そうでなくても追われてるから」

駄目なんだ。掴んでは駄目なんだ。

 ガシャアアン

何かが、頭にあたった。視界がぼんやりとする。
ミールちゃんが、震える声でお母さん、と言うのがわかった。

「ミール。ミール」

頭から、生暖かい液体。
ミールちゃんは、叫びながら空孤に手を引かれ何処かへ行った。

まぁ、都合がよかったのは確かだ。