人が来る前に、直してしまおう。
僕は、鞄の中から銀色の懐中時計を取り出し、時計を見た。
『Time quantity 五時半』
五時間三十分、か。結構使ってたんだな。
でも、今はほんの数分『戻す』だけだ。
「リターン」
“時計に刻まれし 時を払い 彼を望む時間に”
僕の躯(カラダ)は光に包まれ、一瞬でその光は消えた。
僕の躯は数分前の、状態に戻った。
時の創世者兼権利者“グラーチ”の所有物だったものだ。
これを使う度、思い出す。
あの双子の言葉を。
「さて、空孤の所に行くか」
僕は、床の上に落ちていた札を拾った。
人が騒いでいたが、誰がやられたかは誰も見ていない。
だから、僕は何事もなく宿を出ることができた。
外にでると、石で出来た白い家が立ち並んでいた。
本当に、何もかもまっ白だ。
「空孤って、素直じゃないのかなぁ」
札を見た。呪い(まじない)がかけてある。
この町の結界のものじゃない。これには、“封印の呪い”がかけてある。
僕はどうやら間違いをおかしていたようだ。
「厄介なことに巻き込まれなきゃいいけど」
空孤が許したら、ミールちゃんを連れて行こう。
でも、面倒だなぁ。奴等を敵にまわすと更に面倒だ。
「あそこにいるんだなー」
向こうのほうに、白い高い搭がみえる。あそこから、空孤の殺気を感じる。
行こう。