案内された先は、崩壊していなかった。
でも、普通のよりはさびれている。

そこにはひとが集まっていた。これで、全部か、と思うくらい。
中心にはベッドのようなものがありそこに白いひと、が横たわっていた。

女性は群集をかきわけ、僕をベッドの前に連れて行った。

見た時、驚いた。

「ヘイムダル……!」

それもあった。が、一番気になっていたのがいつもヘイムダルが持っているはずの
ギャラルホルンが、ヘイムダルにない……!

何故だ、アレはとても大切なもの……!

ヘイムダルの様子はおかしかった。
眠りを必要としないヘイムダル。草の伸びるわずかな音さえも聞くことができる鋭い耳の
持ち主。
だから、傷つくこともなかった。今は違う。
ひとのように、衰弱しきっている。
光の創世者であり権利者とは思えない。

「ルジ、か」

ヘイムダルが目を覚ました。

「ヘイムダル、何があった」
「気をつけろ。狙いはお前だ」
「そうか。……ルーンが目覚めたのか」
「ああ。この耳で聞こえた。オーディンは怒っている。そして、言っている」
「何と?」


「卑御汰と卑御手 のせいだ、と」
「あの双子か」